屠所の羊

備忘録

杏寿

劇場版鬼滅の刃無限列車編、怒涛の快進撃を見せていますね。私も一ファンとして観賞いたしました。

鬼滅の刃は漫画から追っていて、コミックス派なので最終回はまだ未読です。私は漫画という表現方法そのものが好きで、漫画原作でアニメを絶賛することはあまりないのですが、鬼滅の刃は例外でした。原作の独特の絵柄も、独特の台詞回し、シュールな笑いなどのすべて好んでいたので劇場版が公開されるまでアニメは見ていませんでした。どうせ漫画は越えられないと思っていました。

劇場版を見に行くことにしたのは、ただ暇で疲れていたからです。煉獄さんが死ぬことも知っていたし、おそらく泣けるだろうなと思ってカタルシスを求めて観賞しに行った。

軽い気持ちで観に行って、恐ろしいものを観た。

金はすごくかかっているだろうと踏んでいた。全世界で大ヒットしているアニメの劇場版なのだ。私が制作側だったら一世一代の大仕事だと心を燃やして作り上げる。

いやあ燃えていました。

まず映像がものすごく美しい。炭治郎の無意識領域はとても暖かいし、煉獄さんの無意識領域は少し不安になる。あんなに心を燃やして彼は・・・彼は・・・・なんにも残らないよ・・・。夢の中でも父に認めてもらう言葉をもらえない煉獄杏寿郎に私は目頭が熱くなり申した。しかし、これは帰宅後0巻を読むとまた印象が変わる。そもそも「杏寿郎」という名付けですよ。両親はなにより長生きして欲しくて名付けたのでしょう。我が子も鬼狩りになると思いながら。そして彼は父を理解していた。父が杏寿郎を思って、息子のことが心配で心配で認められなかったことを、彼はちゃんと気づいていて、夢の中ではそんな父を否定しなかった。父は父のまま。千寿郎は千寿郎のまま。もっと都合の良い夢を見れたと思うんですよ。自分に熱心に指導してくれる父、優しく凛とした母、可愛い弟、そんな日常を彼は夢見なかった。彼にとって一番幸せな瞬間は、父に柱になったことを報告する時だったのか。反応はどうであれ。他者からの評価に依存しない強い自己と自分の果たすべき責務を意識していることに慄きました。正直漫画ではこんなに考えなかった。あと細かいんですけど、劇場版だと夢に切り替わったときに煉獄さんの右手が脇に置いた日輪刀に触れて(ああそうだ、柱になったご報告を)と思い出すんですが、この演出がまた良い。原作を忠実に再現しながら細部に息を吹き込んでいく。最高の仕事をしてくれている。この演出考えた人天才だから名乗り出て欲しい。

あとやっぱりアニメーションは音の力が大きい。伊之助の夢の洞窟探検隊のリズムと動き、めちゃくちゃ良い。あとなんだろう、声優さん良いよね。善逸の「禰逗子ちゃんの爪先も濡らさないよ」漫画よりアニメの方がセリフのインパクト大きかった。私、耳が悪いからかアニメのセリフ聞き取れないこと多々あるんですよ(私生活でもよくあるが)、だからか漫画の方がセリフがしっかり入ってきて良いってのもあったんです。アニメの方がしっかり入ってくるなんて新鮮です。

声優といえば、魘夢の声、めちゃくちゃよかった。なにあれ。特になんとも思っていなかったキャラだし、どんな声でもどうでも良いやって思ってたんですけど、演技はうまいし、キャラがさらに良いキャラになってるし、音の力ってすごいなと感心した。最後消えていくときの演技とか、表情とかなにもなくても声だけで表情と感情が伝わってくるすごい演技かつめちゃくちゃ聞き取りやすくて・・・声優さんの名前覚えました。

みんな、聞き取りやすい(涙)

炭治郎と伊之助が少し聞き取りにくい時あるくらい。

炭治郎が「そんなこというわけないだろう俺の家族が。俺の家族を侮辱するな」とぶちぎれるシーンあるじゃないですか。あのシーン、炭治郎の家族は本当に良い人たちだったんだなあとこみ上げてくる大好きなシーンなんですけど、侮辱するなはすこし聞き取りにくかった。それも含めてめちゃくちゃ感情こもっててよかった。好きなセリフに息が吹き込まれていた。ありがとう。世界ありがとう。

煉獄さんの戦闘シーンに関してはもう、映像栄えするわするわ。わたしが初見だったら負けると思わないよ??????

奥義、のところから鳩尾貫通まで、漫画だとなにも描かれていないところをまた昇華させてくれちゃってますわよね。初見のときビリビリと緊張した。「奥義」とかいうベタな言葉に心震えるほどかっこいいと思うなんて思わないじゃん。もう27歳よ私。

しかも、よもやよもや、その奥義が「煉獄」ね。心得てらっしゃる。オタク心を・・・。

そこからの母の回想。最後の瞳の揺れ、またアニメっていいなって思わせてくれる小粋な表現してくれるじゃん・・・。恐ろしい・・・。しかし、彼はどれだけのものを背負わされてきたのか。あんなに幼い頃から。

炭治郎の逃げる猗窩座への投擲からの「煉獄さんの勝ちだー!!」漫画でも泣きましたけど、声つくとまた、しんどさが半端ないのと、音楽が反則です。劇場版観た時アニメみてなかったから知らなかったけど、あれ竈門炭治郎の歌なんだね。あの曲がまた良くてお涙頂戴よ。言ってしまえばあんな負け惜しみみたいなことを、全力で泣きながら言ってくれる主人公、なかなかないですよね。

その後の煉獄さんの声音の優しさたるや。声優さんってすごい。

煉獄さんが最期に母へ問いかけるセリフも、ハキハキしていて、もう死ぬ人とは思えなくて、でもそこが煉獄さんだなって、わたしは今これを書きながら泣きそうです。いろんな表現ができただろうに、ああいう表現をしてくれて、私は感無量です。

「何か一つできるようになっても、またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ」という好きなセリフも、おいおい泣きながら聞きました。

私は知ってたから耐えられたけど、初見、死ぬのでは?

劇場版を観終わってからアニメ追っかけたけど、だって那田蜘蛛山編でボロボロになって、柱って別格の強さなんだって知って、無力を思い知って、全集中の呼吸の常中できるようになって、万を侍しての無限列車編ってことでしょ?そんなんそろそろ勝つと思うじゃん。えぐすぎる構成だし、爽快感ないのになんでこんなにヒットしてんだわからん。

たしかに実質煉獄さんの勝ちだし、猗窩座の逃亡の姿とか惨めだからそれでバランスとれ・・・ないだろ。煉獄さん死んでんぞ!!!!!誰一人死なせないでくれよ。己含めてさあ・・・。

これ以降煉獄さんが出ることはないと思うと、しんどい。そうしてオタクは何度も劇場へ足を運ぶのであった。

立派でした。

死ぬほど立派でした。

主題歌の炎、良いですね。なんだか穏やかでピンとこないなと初めて聞いた時は思いましたが、今では反射的に心がきゅうっとなります。エンドロールの画集をください。頼むから画集を出してください。煉獄家のアルバムを。

100億の男と呼ばれていますが、500億くらいの煌めきを放っていました、煉獄杏寿郎。