屠所の羊

備忘録

涙と大地

悲しくて悲しくて、涙が出てくるけれど、何が悲しいのかよく分からない。失ったものは何かと問うてみても、果たして私は失ったのか、それとも得たのか分からない。溢れ出るこの感情は怒りか。どうしようもないこの感情に名前をつけたくて、文字に起こす。ぐちゃぐちゃになった頭と顔を、私は整理しなければならない。涙をいくら流しても、何も解決することは無いのに、涙はいつか自然に止まってしまう。悲しみが尽きたわけではないのに、涙は尽きてしまう。そうして私の言葉にならない感情は、涙とともに尽きてしまうのか。それはとても悲しいことだと思う。なんて哀れなんだろうと、自分で自分を客観視して、まるで感情移入するかのように涙を流す。私は一体どこにいるのだろうか。悲しくて悲しくて、涙が出る私は、悲しくて悲しくて、自分のことをよく分からない。1度その感情に溺れてしまえば、また自分の涙を飲んで、窒息せずにすむのかもしれない。ぷかぷかと私の体が浮くまで、私の涙でこの世界をいっぱいにして、楽しくゆらゆら揺れていたい。それが涙であったか、海水であったかなんて、誰にもわからない。ちょっぴり辛い、味付けされてる、魔法の水。私の中にも流れてる、魔法の水。空からも降ってくる、魔法の水。涙は雨になってまた私を潤す。私は大地を潤すために、なんだか分からない涙を流す。いつか芽吹くものがあるなら、その時その名を尋ねよう。きっと名付けるのは、私ではない。