屠所の羊

備忘録

誕生日。

誕生日。

幼い頃は誕生日を祝ってもらうことになんの疑問も抱かず、みんなが私に優しくしてくれ、プレゼントをくれ、ケーキを食べられる素晴らしい日だと思っていた。キラキラした毎日の、特にキラキラした日。今思うと愛されて幸せに育ってきたのだなあと実感する。この歳になっても朝一番に両親は「おめでとう」のメッセージをくれる。

だが、逆に自分はというと、あまりに愛されて育ったからか、一抹の寂しさを感じてしまう日となってしまった。あの頃みたいにキラキラはしていない、何かの楽しみを支えに生きる日々(言ってるほど辛くはない)。その毎日の中で、かつては特別だった日は、平凡な毎日の一部に落ち込んでしまった。あの日を特別なものにしていたのは、私ではなく家族の愛だったのだと実感してしまった。今もその愛を遠くから送ってくれるが、いつまでもあるものではないのだ。かつてもらった愛を糧に、私はぶくぶくと太り、次は誰かをたくさんの愛でぶくぶくにさせなければならない。特別を作る番だ。

昔は家族の誕生日など、ただの楽しいイベントでしかなかった。しっかりと祝ったことはなかったが、今はみんなの誕生日に、生まれてきてくれてありがとうという気持ちが湧いてくる。たいそうな奇跡だ。

あなたが生まれ、無事に生き、成長し、様々な選択の末に私と袖振り合ったということは、たいそうな奇跡だ。有難いことだ。

心からお祝いしたい。